求人広告を出す際には、どのような人材を求めているのか、募集条件などを記載する必要があります。しかし、求人広告にNGワードを使っていた場合は法律違反となります。
採用後のトラブルや会社のイメージダウンを避けるためには、求人広告に使ってはいけないNGワードや禁止表現についてしっかり把握しておかなければなりません。
本記事では、求人広告の作成時に押さえておくべき法律や求人広告のNGワードについて解説します。
これから、求人広告を出したいと考えている方や採用後のトラブルを避けたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
求人広告の作成時に押さえておくべき法律
求人広告のNGワードが存在するのは、これから紹介する5つの法律が関わっているからです。
まずは、求人広告を出す際に押さえておくべき法律を紹介します。
労働基準法
労働基準法とは、労働者を保護する目的で定められた法律です。正社員はもちろんパートやアルバイトを含むすべての労働者を雇用している事業者に適用されます。
労働基準法には、労働時間・賃金の支払い・休日労働に対する割増賃金などの労働条件が定められています。
たとえば、労働基準法で定められている法定労働時間(原則1日8時間・1週40時間)を超えて労働者が働く場合、時間外労働になるので所定の割増賃金を支払わなければなりません。
労働者を雇用する事業者は、求人募集をする段階であっても労働基準法を遵守しなければなりません。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法は、労働者が性別を理由に差別されることを禁止した法律です。具体的には、以下の項目において男女差別を禁止しています。
- 募集および採用
- 人員配置
- 昇進および降格
- 教育および訓練
- 福利厚生
- 職種や雇用形態の変更
- 解雇
- 労働契約の更新
したがって「男性と女性で採用条件を変える」「女性のみ歓迎」「女性のみTOEIC700点以上を採用条件とする」といったような求人募集は違法となります。
雇用対策法
雇用対策法は、労働者の職業の安定や経済並びに社会的地位の向上などを目的に制定された法律です。
2018年の働き方改革推進のための法改正に伴い「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と名称が変わりました。
この法律により事業主は「年齢を理由に応募を断る」「選考過程において年齢を理由に採否を決定する」といった行為ができなくなりました。
ある程度若い人を採用したいなど求める人材像がある場合は、職場の雰囲気や求める人材像に近い写真を求人広告に掲載するなどの工夫が必要です。
なお、警備業法により18歳未満の人が従事できない警備員・技能やノウハウの継承が必要な特殊な職業については一部例外が認められています。
職業安定法
職業安定法とは、求人や人材紹介など労働市場についてのルールを定めた法律です。
職業安定法では、求人広告に以下の事項を定めることを明示しています。
- 業務内容
- 契約期間
- 就業する場所
- 労働時間
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間
- 休日
- 賃金
- 健康保険や雇用保険などの適用の有無
また、職業紹介を行っている企業は、厚生労働省に情報提供を求められます。
なお、2022年10月に改正されたポイントや注意点はこちらで詳しく解説していますので、ご覧下さい。
>>2022年10月1日施行の職業安定法改正とは?ポイントや注意点をわかりやすく解説!はこちら
最低賃金法
最低賃金法とは、会社が労働者に対して支払う最低賃金を定めた法律です。最低賃金が定められている目的は、労働者が安定した生活を送ること、労働力の向上などがあります。
最低賃金額は都道府県によって異なっており、たとえば令和5年5月時点の東京都の最低賃金は1,072円です。
よって、東京都に事業所がある場合、時給1,072円を下回る水準で求人を募集するのは最低賃金法違反となります。
なお、最新の最低賃金は厚生労働省のホームページで確認できます。求人広告を出す際は、最新の最低賃金を確認しましょう。
求人広告のNGワード
求人広告を出す前にNGワードを把握しておけば、法令違反を避けられます。どのような表現が禁止されているのか、どのように書き換えれば問題がないのか、順番に解説します。
性差別となるワード
性差別となるワードは、男女雇用機会均等法により禁止されています。
NGワード | 問題ない表現 |
---|---|
× 女性限定 | 〇 男女歓迎 |
× 主婦歓迎(主夫歓迎) | 〇 主婦&主夫歓迎 |
× 男性3人、女性1人募集 | 〇 4名募集 |
× 女性事務職募集 | 〇 事務職募集 |
× ウェイトレス募集 | 〇 ホールスタッフ募集 |
× 男性は業界経験3年以上、女性は未経験可 | 〇 業界経験3年以上(もしくは未経験も可) |
× 幹部候補(男性歓迎) | 〇 幹部候補 |
× 働くママ歓迎 | 〇 働くママが活躍中! |
× 面接後に男性は別途適性審査あり | 〇 面接および適性検査あり |
男女のいずれかに限定だけでなく、歓迎という書き方もNGワードとなるので、男女歓迎のように両方の性別が含まれる表現にしましょう。
また、ウェイトレスのように職種から性別が想起できる表現もNGワードになります。よって、保母や営業マンといった表現もそれぞれ保育士、営業スタッフに変えなければなりません。
ただし、女優・俳優など芸術分野や深夜の警備員・レースクイーンなど業務上の理由から特定の性別の人を示唆する表現が認められるケースもあります。
年齢差別となるワード
年齢による差別は雇用対策法により禁止されています。
NGワード | 問題ない表現 |
---|---|
× 40歳までの方 | 〇 年齢不問 |
× 18歳以上 | 〇 年齢不問 |
× 若手歓迎 | 〇 学生歓迎 |
× 25歳未満の方は適正検査を実施 | 〇 応募者全員に適性検査を実施 |
しかし、以下のように年齢を載せる合理的な理由がある場合は、例外的に記載を認められます。
- 定年年齢を上限として労働者を期間の定めなく募集する場合
- 長期勤続によるキャリア形成を目的として、若い方を期間の定めなく募集する場合
- 法律上、特定の年齢層の就業が禁止されている職種で募集する場合
定年年齢を65歳としている会社の場合、65歳未満の人を募集する必要があるため、65歳未満の方を募集といった記載をしても問題ありません。
18歳未満の人は、重量物の取り扱い・足場の組み立てなどの危険な業務を伴う場合やホステスなど酒席に侍する業務などは就業できません。そのため、18歳以上といった表記が認められています。
特定の人を差別・優遇することになるワード
特定の人を差別・優遇することになるワードは、労働基準法により禁止されています。
NGワード | 問題ない表現 |
---|---|
× 外国人歓迎 | 〇 外国人を想起させる表現を使わない |
× 国籍不問 | 〇 国籍を想起させる表現を使わない |
× ●県にお住まいの方(●県出身の方) | 〇 ●県にお住まいの方は通勤が便利 〇 地元の方も歓迎 〇 Uターン、Iターン歓迎 |
× ブラインドタッチができる方 | 〇 タッチタイピングができる方 |
× コミュニケーション能力がある方 | 〇 コミュニケーションを取りながら接客できること |
× 徒歩での通勤が可能な方 | 〇 30分以内で通勤できる方 〇 お近くにお住まいの方歓迎 |
× 体力のある方 | 〇 体力が必要なお仕事です 〇 体を動かすのが好きな方歓迎 |
× 明るく元気な方 | 〇 元気に挨拶ができる方 〇 明るいスタッフが多い職場です |
●県にお住まいの方(●県出身の方)がNGとされている理由は、出身地や居住地の特定につながるからです。
ブラインドタッチができる方は、ブラインドが「目の不自由な」という意味にあたるためNGワードとなります。
また、体力のある方は身体条件、明るく元気な方は性格に触れているためNGワードです。
実態と異なる条件を示唆するワード
求人広告に実態と異なる条件を提示する行為は、労働者をだますことになるので禁止されています。
- 給与が都道府県の定める最低賃金以下
- 給与に最低金額の記載がない
- 給与が手当込みで記載している点について記していない
- 交通費の支給額の規定の記載がない
- 就業時間が法定労働時間(原則1日8時間・1週40時間)を超えている
- 残業があるのになしと記載
- 勤務時間に対して休憩時間が少ない
たとえば、会社は法定労働時間を超える労働に対して、労働者と36協定(法定労働時間の上限が月45時間、年間360時間となる)を結ばなければなりません。法定労働時間を偽り36協定も結ばなかった場合は、労働基準法違反となります。
また、会社は労働者の勤務時間が6時間を超えたら最低45分、8時間を超える場合は最低60分の休憩を取らせなければなりません。8時間働いている労働者に休憩時間を30分しか与えていないようなケースは、法律違反となります。
なお、求人広告を出した後に会社の経営状況が悪化して労働条件を変更する場合は、採用前に労働者に説明すれば問題ありません。
求人広告にNGワードや禁止表現を掲載した場合の罰則
求人広告にNGワードや禁止表現を掲載した場合は、職業安定法第65条にあるように6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
第六十五条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
出典:e-Gov
法律に違反していた場合は、行政からの是正勧告を受けるため、期限までに違反内容の改善をしなければなりません。「ハローワークや職業紹介事業者での募集が一定期間受理されなくなる」「会社のイメージダウンにつながる」といった恐れがあるので、NGワードや禁止表現の記載をしてはなりません。
まとめ
求人広告を出して人材を募集する場合は、どのような表現がNGワードとなるのか把握しておく必要があります。
求人広告にNGワードが使われていた場合、罰則や行政からの是正勧告を受けるため、特定の人を差別・優遇する表現が含まれていないか確認しましょう。
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